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HWSも、ようやく100名を越える社員数になった。これからの時期に必要なのは、単純な数的拡大ではなく、我々のビジョンと理念の共鳴するメンバーの増員だと認識している。
よく「社員数が増えるとマネージメントが大変で・・・」と言うような事も聞く。100名が一つの壁というようなアドバイスも頂いた。しかし、そんな見えない壁を意識する意味もないし、100名を越えてマネージメントがきつくなるとも思えない。
理念とビジョンの共鳴が根底にあるメンバー達であれば、ご機嫌取り的なフォローは必要ないからだ。それぞれが自分の役割を認識し、組織の前進に純粋に貢献している状態で、フォローはいらない。その業務自体が各人の未来を確実に作っているからだ。それぞれの社内でのミッション・業務自体が、各メンバーをマネージメントし、各メンバーを教育するのだ。
上司が行うのは、補助的な指導にすぎない。
これを実現する為にも、採用の方向性は「理念と理想への共鳴」なのだ。ここに妥協すると、一時的な拡大を達成しても、本質的に組織は前に進まず、無駄なフォローにリーダーの労力が割かれる。
よって、この規模のエンジニア数でありながら、会社が定めた営業社員として専属でその任に当たっているメンバーは現在一人しかいない。各リーダーや、各チームのスタッフが営業活動をしているケースはあるが、その辺りはPM(プロジェクト・マネージャー)の判断に任せている。
このHWSにおいて営業の全てを担っている男について書きたい。名を依光某と言う。
彼と初めて出会ったのは三年ほど前であろうか。まだ、HWS設立前の事だ。某企業の一事業部として、私一人から事業を立ち上げ始め、半年も過ぎた頃である。メンバーの数も片手に収まる程度で、オフィスは渋谷の新南口にある、ボロボロのビルだった。
先日、渋谷駅の新南口をHWS役員の疋田と利用する機会があったので、そのビルを久しぶりに訪れた。疋田の感想は、「僕だったら面接を受けずに、入り口で帰りますね」との事だ。
ビルの入り口でたまたま引き返さなかった依光は、私の面接を受けることになる。
当時、エンジニアとして数ヶ月のキャリアを持っていた彼は、とりあえずそれを活かして、しばらく稼ごうと思っていた様だ。エンジニアという道を将来目指す気もなく、つなぎで効率よく給与を得るために面接に来た感じだ。
話を聞いてみると、スターバックスにてアルバイトしていた経験があり、その時の充実感が忘れられず、またコーヒー好きもあり、将来はカフェを運営したいと言っていた。ITの世界とは全くかけ離れている。
面接は人と企業をマッチングさせる場所ではあるが、それ以前に人と人との出会いの場所だと思っている。私の頭の中からは、いつも通り打算は消えて彼のために一番良い方向を、人生の先輩として考え始めていた。
色々話をした結果、条件や業務内容についての話などはせず、生き方を選ぶように諭した。諭したと言うより説教に近かった様にも思う。
★★★★★★★★★★
中途半端な気持ちで技術の道に進んでも時間の浪費だ。これから言う二つの道のどちらかを選択しろ。
一つは、エンジニアとしてキャリアを積むなら、腰掛けではなく一旦この道を極めろ。極めた先には高い報酬と、何かを極める過程で作り上げられた人格と能力がついてくる。それを利して己の夢を実現しろ。その為にも先ずはエンジニアである事に没頭し極める事を覚悟しろ。
もう一つの道は、エンジニアとしての道はきっぱり捨てる事。自分の夢を掴むために一番近道だと思うことに全力を投じろ。
★★★★★★★★★★
こうアドバイスした。
彼は数日考えた結果、「エンジニアはきっぱりやめます」と報告してくれた。
その後、約2年の間は、全く利害関係は無く、日曜日の勉強会に参加したり、仕事の相談を受けたりしながら関わった。私自身、全くの打算はない。まあ、打算を持てるほどの何かを、当時の彼は持っていなかったので、持ちようもない。
エンジニアの道に完全に幕を下ろした彼は、とりあえず夢に近づく為にと、デパートの地下にある、紅茶屋で販売の仕事を始めた。それなりに専門知識は得たようだが、ビジネスの深みを味わえるポジションではない。現職での成長に疑問を感じた頃に再び彼と会った。
当時、ITのビジネスは順調に進めていたが、一部貿易の仕事にも関わっていた。インドとのつながりが出来ていたので、インドのパートナーから、IT以外の商材を日本に輸出出来ないかという相談も受けていた。紅茶、コーヒー、スパイスなどが世界的に有名である。生産者から直接仕入れるルートも確保したので、価格的に優位に展開出来る可能性もあった。
コーヒーと紅茶というキーワードから依光の事を思い出し、連絡を取った。彼自身も現職について考えていたタイミングだったので、このコーヒーと紅茶を含めたインドの特産を事業化しろというミッションを与え入社に至った。
当然、このコーヒーと紅茶を彼が事業化する可能性はほぼ無いと言うことは、最初から分かっていた。私が彼に与えたかったのは事業を運営する事の難しさ、自分の性能の至らなさに対する気づきだ。
予定通り、二ヶ月ほどインドともやり取りしながら足掻いた結果、事業化は全く見えないと結論付いた。
エンジニアの道を選ばなかった彼が、今から特化しなければならないのは営業であった。彼の才能、性質、進む道を考えても、営業によって対人スキルとマーケティングセンスを磨くことが未来への道に必要だった。その営業の必要性を彼自身が腹から気づく為にも、事業構築に費やした二ヶ月は必要だった。無駄な期間ではない。
結果、HWS唯一の営業社員として、一年半を過ごすことになる。まだまだ、未熟な部分も多いが、一年半の成長度合いとしては、素晴らしい伸びを見せている。誰にでも真似が出来る仕事はしていない。
彼の性質の素晴らしさは、おちゃらけた外見とは裏腹に、内部に強い感受性と人生に対する真摯な情熱を有している所だ。彼の人生に対する態度は極めて真面目だ。表現方法はちょっと不真面目に見えるが・・・。
若いだけにずれた価値観もあったりするが、素材としては素晴らしい。純粋に優秀と言うよりも、かけがえのないオンリーワンの人材として育つ事は容易に想像がつく。
清濁併せ呑む様な大胆さと強さもあるが、トラブルを未然に防ぐための繊細な想定力もある。
もう少し歳を重ね、ビジネスの深淵を知り得た時に、どの様な姿に完成していくのか今から楽しみにしている。社内で唯一の特殊なポジションにいるので、自分スタンスと動き次第では、あらゆるキャリアを積むことが可能だろう。
私自身を含めて、HWSのメンバーは、クライアントの為、面接者の為、HWSに関わった全ての人の為に、時には自社の利益も捨てて関わる事が出来る。たとえ即時的な利益が得られなくても本質的に正しい道を歩み、正しい主張をして損をすることもない。
面接に来られる方に対しても、HWSに利益があるかと考える前に、この人はどうすれば幸せになれるのか?どうすれば後悔しない人生を歩めるのか?を先に考えてしまう。そこからスタートして、結果として手を組めた方が、最終的にHWSの為にも本人の為にもなる。だから会社の事を誇大して良く見せ、上手く人を採用する気など毛頭ない。
本気でこのまま生きているので、面接してから二年後に入社という変な関係もあるのだろう。多くのエンジニアが自らの人生を燃やし、満たされた生涯を送るためにロマンを追える環境をHWSに実現出来るのだろう。
立場上、多くの他社の営業の方ともお会いする。何かを売りに来た、セールスマンを追い払う様に扱うこともない。人間同士として、誠心誠意接する。だから、営業が成立しなくても、その後色々な情報を持って通ってきてくれる営業マンも多い。せっかくの出会いなので、営業マンと経営者ではなく、人間同士として付き合わせて頂く。
人間に対する態度、人生に対する態度は常に一貫したい。その一貫した態度が、組織の文化を創り、驚くような事業を実現していくのだ。
エンジニアとして面接に来たのに、「エンジニアをやめろ」と説教され、気が付いたら共に会社を作っている様な、一風変わっているが、我々に取っては必然で変な関係が、これからも数多く生まれる事を期待してやまない。
型にはまらないから、人生は面白いのだ。