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以前から、企業が傾く要因は、経営環境などの外部要因ではなく、内部崩壊だと書いてきた。不安が組織内に広がり、内部崩壊へと向かうパターンがある。不安から不満や批判が生まれ組織は内から崩れ去る。
経営者も不安に苛まれるとバランス感覚を欠く。平時であれば的確に下せた経営判断に切れが無くなる。結果、リーダー自ら不必要な不安や不信を誘引し、組織は最悪の方向へと向かう。
私のビジネス人生の中で、組織の内部から繁栄も衰退も経験した。この項では、経営の厳しさについて書く様に見せかけて、実は不況下における希望について書きたい。
組織は表面的に見ると極めて脆い。僅かな不信や不安で、瞬時に志気が減退する。しかし、その脆さと同時に、芯の部分にしなやかな強さも持っている。特に社歴がある組織は強い。何のマネージメントや教育を施した訳ではなく、長い年月が自然とロイヤリティーや文化を育んでいる。メンバー達がその会社に長い時間を使ったという事実は、思っているより重い。
私が25歳くらいの時だろうか。当時は社長ではなく、一営業管理職だった。急成長を続けた自社が、戦略及び人事の失敗によって売り上げが1/10程度まで瞬時に下落した。完全に経営陣のミスなのだが、現場のリーダーだった私は自分の事と感じ、事業の建て直しに奮闘した。
体制変更が失敗したその月から全社員の給与が止まった。今思えば業績が好調な時に社内留保をほとんどしていない事自体が信じ難い。その後の一年間は、正に無給、無休で働いた。給与も交通費も出ないので、すぐに僅かな貯金は底をついた。出口の見えない、厳しい時間が続いた。
メンバー達は自社に愛情や誇りを持っていたので、無休でも愚痴一つこぼさず業務に当たった。未来への不安も心の憶測に沈め、ひたすら目の前にある業務に没頭した。やがて、一人二人と脱落者は出たが、一時的には売上も最盛期の1/3くらいまでには持ち直した。
不況の影響ではなく、勝手に自ら転けたのだが、それでも会社は生き延び、倒産するまでにはかなりの時間がかかった。今の私の経営的な技能があれば、間違いなく潰さずに再起させられた。今思えば、再起に必要な時間を生き延びるだけのしぶとさは有った。ただし、経営陣の未熟さ故に、その時間が有効に使われる事は無かった。
売り上げが1/10に減っても生き残ることは可能だ。生き残る道はある。生き残る方法は残されている。しかし、絶望に支配された人間には、その道が見えない。
苦しくなると、当事者は二つの逃げ道を用意する。
一つは、「あきらめ」と言う逃げ道だ。早期にあきらめに逃げ込めば、心の負荷が減る。開き直って努力を放棄すれば、まわりに迷惑がかかるだろうが自分の心理的負担は減るのだ。倒れゆく組織から一目散に逃げるのはこの種の人間だ。
もう一つは、「楽観」と言う逃げ道だ。何とかなると言う根拠の無い他力本願によって、自らの努力を放棄する。このタイプの経営者は案外多い。ギリギリまで何とかなると自分に言い聞かせ、本人もその気になってしまう。「僕はついているから・・・」と言うセリフを間違って使い、現実から逃避するのだ。本当のポジティブさとは、リスクを真っ正面から受け止め、その回避の為に全身全霊を込めて動く事を言う。現実から逃げる中で吐かれる前向きな発言は、ネガティブ以外の何ものでもない。
逃げずに正面から問題解決に当たれるなら、組織は案外しぶとい。しかも、経営者のみではなく、全メンバーが逃げないとしたら、その組織が倒れる事はない。
多くの経営者、多くのビジネスパーソンには、希望を持って欲しい。あなたが所属する組織は、そう簡単には倒れない。倒れる原因があるとしたら、現実からの逃避が生み出す自壊のみだ。
不安や難題から逃げず、組織の再建にひたすら注力すればよい。この市況を越えた時にかつてない成長を実現する為に、組織を強靱に作り上げる機会を我々は得ているのだ。
最近多くのエンジニアが弊社へ応募して来る。その数は毎月二百名にも達する。すでに所属している会社が倒れているなら仕方がないが、まだ微塵でも希望があるなら、自社を離れず立て直す事を説いている。その行為が本人のビジネス上のキャリアも生むし、リーダーとしての人格も育む。
二十年の間に何度も経営危機を経験した。その中で、私は組織の本質的な強さを確信している。しぶとくしなやかな強さを実感している。だから、事業を営む中で不安は一切無い。恐れるべきは、自らが腐る事だけだ。
ギリギリまで決して諦めてはいけない。投げ出してはいけない。不安な事から目を背けてはいけない。楽観してはいけない。悲観してもいけない。
現実を直視し、リスクに対して正面から相対するのだ。ファインプレーもいらない。自分達の英知を絞り、対策を立て行動に移せばよい。悩んでいる暇は無い。ひたすら問題解決に向けて動くのだ。状況を正しく理解するのだ。
リーダーがこの様なスタンスで動けば、組織は決して倒壊しない。ビジネスパーソンならこの真実を理解し、自組織の繁栄を目指して欲しい。