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【日本型ITパーク】
先ずは理想像から書きたい。私が志向するITパークは、学校の様でもあり、企業の開発チームでもある。
そのITパークでは、全ての開発が英語をベースとして行われる。大学を卒業して日の浅い才能の豊かなエンジニアが世界各国から集う。中国、韓国、インド、ベトナム、インドネシアetcなど国籍を問わず、アグレッシブでチャレンジャースピリット溢れるエンジニア達が一個所に集い、実際の開発を共同で進める。
企業に一旦就職し派遣された者もいれば、大学を卒業して自費で合流した者もいる。この機関を回すコストは、派遣元の企業から頂く。学費の代わりに案件を頂き、その収益での運営を目指す。メンバーには給与は出ないが、大きな学費を取られる事もない。願わくば国から何らかの援助として、補助金なり開発案件なりを頂きたいところだ。その価値は十分に出せる。
全寮制で付近には娯楽施設は無い。メンバー達の週末は寮の仲間とキャンプでもやるか、ひたすら勉強するかに使われる。2年から3年程度の期間が過ぎ、必要な経験が積まれた後に卒業となる。各々は自国に戻り復職及び起業に取り組む。日本人エンジニアも所属している企業に戻り、現場に投入される。海外との連携においては、リーダーシップを取って、自社に貢献する。
自社に戻った日本人エンジニア達には、いくつかのアドバンテージが存在する。
● 英語環境での開発技術
● 世界標準での開発経験
● 世界中に散る同胞のネットワーク
特に三つ目のネットワークが重要だ。海外と連携した開発は、契約書を綿密に作成したり、オペレーションの完成度を上げるだけでは高いパフォーマンスを実現出来ない。ビジネスの世界は基本的にウェットな部分も多く、「あいつなら信頼できる」「この仕事はあいつに任せたい」などの思い入れがあり、初めて強い連携の下に付加価値を生み出せる。私自身も立場上多くの経営判断を行うが、表面的な条件の良さを判断基準にしていない。一定のメリットは取るが、大事なのは「一緒に仕事を進めるパートナーは本当に信頼できるのか?」「その仕事を成すことに情熱が持てるのか?」ということだ。文字通り同じ釜の飯を食い、汗を流し開発を行った仲間が世界中にいる事の価値は、ビジネスをスピーディーかつダイナミックに進めるには必須条件だろう。
【ITパーク実現のタイミング】
現在の日本にはまだ経済的なパワーがある。インドもベトナムも日本市場に対する意欲は高い。今なら、日本マーケットを攻略する為の訓練が出来るITパークがあれば、世界中から人材は集められる。
先日ミャンマーに渡航し、若いエンジニア達と交流する機会を持った。彼らは口々に「ジャパニーズ・クオリティー」を学びたいと言っていた。ソニー、トヨタなどを筆頭に日本製品の品質の高さは、どの国に行っても周知されている。アジアを中心とした多くのエンジニアは、漠然とでも日本の技術に対する憧憬を持っている。
今の日本は多くのエンジニアを世界中から惹きつける要素を持っている。ホスピタリティの高さも卓越しているので、来日したエンジニア達のストレスも比較的少ない。唯一の難点は、物価の高さだ。しかし、今回のITパークのスタイルなら、地価の安い田舎で外部への接触は少ないので、生活費を抑えることは可能だ。賃金を払う訳ではないので、人件費の高さも問題にならない。
先日ベトナムに行った際に、同国内業界最大手のFPTソフトウェア社で要職者と会談する機会があった。現在、同社のクライアントは六割方日本企業だと言う。業界最大手企業の最大のマーケットが日本なのにも関わらず、現場のエンジニア達は日本マーケットを目指していない。やはり、英語を勉強し欧米及びシンガポールなどを目指す。IT関連の資料も英語の物が多いし、英語圏は広いので、未来に対し多くのオプション残せるという言うことだろうが、日本人として多少の寂しさを感じる。
アメリカのIT業界で多くのインド人が活躍した様に、日本も多くの人を惹きつける場になることが必要だ。アメリカは多民族国家という事もあり、早くから世界中の人材を積極的に受け入れてきた。大学には他国からの留学生も多く、卒業後も自国に帰らず、アメリカで就職する。自然、途上国の優秀な人間はアメリカで働くことになる。アメリカの国力は上がる。このアメリカ的なモデルを模倣する必要はないが、日本なりのスタイルで他国の優秀な人材を惹きつけ、他国と連携するする未来を作らなければ、将来に禍根を残す。
ITパーク実現への動きを始めるとしたら今しかない。一日でも早い実現が、日本の国際的競争力を担保する。
【最後に】
日本国内にはまだITパークと呼べる代物は無い。名ばかりのITパークを自治体主導で作った為に、本来のITパークにならずコールセンターの拠点になった例もある。コールセンターをバックアップしても、日本の国際的競争力は得られない。地元に雇用は生まれるだろうが、長期のキャリアパスが見出せる業務ではない。恐らく、日本において新たな文化となるITパークは政府主導では成立しない。政府の援助は必要だが、構想するのは実態を知り、ビジネスを推進する民間企業でなければ実現出来ない。
我々が構想するITパークは日本に必要であり、誰かが旗を振り早期に実現しなければならない。それにより、アジアをリードし世界と戦えるIT産業が日本国内に成立する。
大きな構想であり、今の弊社の体力を考えると戯言と言われるかもしれない。しかし、政府も大手企業も今までITパークを実現していないし、戦略的な構想すら浮上していない。誰かが先導し作らなければアジアの優秀なIT立国に勝利し、未来において日本の地位を確保するのは難しいだろう。
この構想にはロマンがあるし、我々がやらずしてITパークを実現できる集団は無いと勝手に思いこんでいる。アジアとの連携を進め、日本がハイテク立国として未来を獲得するために必要な事業だ。だから我々はチャレンジする。
小企業には小企業の戦い方がある。いきなりコストをかけ、一か八かの仕掛けは出来ないが、現在社内において取り組んでいる環境を、少しずつ巨大化することが日本型ITパークへとつながる。実際、インド、中国、ベトナムと連携した開発経験を持ち、ダイナミックに動ける企業体は国内を見回してもあまりない。大儲けはしていないが、多くのチャレンジを繰り返してきた弊社だからこそ取り組める事がある。
ITパークの候補地もいくつか視察に行った。某離島では、二年間程度家賃を無料にしてくれるという提案も頂いた。まあ、払っても大した額ではないだろうが、我々の構想へ協賛してくれる気持ちが嬉しい。多くのエンジニアがアジア中から集まるには、人を惹き付ける磁場が必要だ。また地理的要件もある。条件が許せば候補地の買い取りを進めても良い。地域も国も巻き込みながら日本型ITパークを実現し、アジアの融和を進められれば本望だ。
京セラの稲盛会長がDDIを作った時に「動機善たるや私心なかりしか」と自分に問いかけていたと聞く。せっかくの通信の自由化も巨人NTTに対抗する勢力が無ければ、通信コストも落ちないし、業界のサービスも向上されない。自分の進む決断が正義であれば社会が自然と後押しをしてくれると考え、周囲の反対を押し切ってDDIを設立したと聞いている。
私のITパーク構想が、ビジネスとして成功するか失敗するかは分からない。未来の事なので、常に勝ち負けはある。ただし、自分の本心には嘘をつきたくない。成否は不明だが、確かな事をあげるのであれば、私自身の心境は「動機善たるや私心なかりしか」である。
ロマンを追求し多くの人を幸せにする事業を創り上げたい。