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2025.08.19 「CopilotでRAGがうまくいかない」企業向けに、SharePoint/Microsoft Fabricをデータソースとした 「Copilot Advanced RAGサービス」開始
AIソリューション事業を手がける株式会社ヘッドウォータース(本社:東京都新宿区、代表取締役:篠田 庸介、以下「ヘッドウォータース」)は、Copilotの業務活用において「RAG(Retrieval Augmented Generation)がうまくいかない」企業向けに、日本マイクロソフト株式会社(本社:東京都港区、以下「日本マイクロソフト」)が提供する「SharePoint」および「Microsoft Fabric」をデータソースとした「Copilot Advanced RAG」サービスを開始したことをお知らせします。
本サービスは、Microsoft 365 Copilot ChatやMicrosoft Copilot Studioの利用を検討・試行中で、RAG導入に課題を抱える企業に向けて、Microsoft Azureのクラウド基盤と組み合わせた高度なRAGソリューションを提供するものです。
ヘッドウォータースは、Microsoft FabricとAzure OpenAI Serviceを組み合わせた生成AIのAdvanced RAGを活用した取り組みにおいて、リーディングカンパニーとして伊藤忠商事やJR西日本の事例を有するリーディングカンパニーとして、多くの登壇実績を重ねてきました。
また、AIエージェントにおける「Agentic Workflow」で正答率99%を達成するなど、生成AI・AIエージェントの活用支援(RAGシステムの構築やラボの提供)を多数の企業に提供してきました。こうした中、多くの利用企業から「Copilot活用においてRAGがうまくいかない」という課題相談を受けており、この課題解決策として本サービスの提供に至りました。
■CopilotインターフェースにおけるRAGの基本
Microsoft CopilotのようなAIアシスタントは、ユーザーのクエリに対して文脈に沿った正確な回答を提供するために、RAGを広く活用しています。Copilotは、ユーザーが質問をすると、まずMicrosoft Graph(ユーザーのメール、ドキュメント、カレンダーなど)やインターネット上の情報源から関連情報を検索します。次に、これらの検索結果を大規模言語モデル(LLM)に与え、ユーザーの質問に対する回答を生成します。
これにより、Copilotは以下のようなメリットを提供します。
・最新性: 学習データにない最新のイベントや情報にも対応可能です。
・正確性: 誤った情報を生成する「ハルシネーション」のリスクを低減します。
・関連性: ユーザーの具体的な文脈や企業内の情報に基づいて回答をパーソナライズします。
・引用: 情報源を提示することで、回答の信頼性を高めます。
■Advanced RAGの必要性
基本的なRAGは強力ですが、以下のような課題に直面することがあります。
1.検索の精度
ユーザーの意図を正確に捉え、最も関連性の高い情報を検索することが難しい場合があります。曖昧なクエリや複雑な質問に対しては、不適切な情報が検索される可能性があります。
2.情報の過負荷
検索された情報が多すぎたり冗長であったりすると、LLMが重要な情報を見落とす可能性があります。
3.文脈の維持
長い会話や複雑なタスクにおいて、以前のやり取りの文脈を適切に維持し、それに基づいて検索・生成を行うことが課題となります。
4.複数の情報源の統合
異なる形式や構造を持つ複数の情報源から情報を統合し、一貫した回答を生成することは複雑です。
これらの課題に対処し、Copilotの性能をさらに向上させるために、Advanced RAGの技術が必要とされています。
■Copilot Advanced RAGサービスとは
SharePointやMicrosoft FabricをデータソースとしたRAG精度向上施策を行います。
これにより、Copilotは単なる情報検索ツールではなく、企業内のすべての情報を統合し、ユーザーの具体的な業務や意思決定を強力に支援する、真のインテリジェントアシスタントへと進化します。
1. SharePointをデータソースとしたAdvanced RAG
SharePointは、企業内のドキュメント、プレゼンテーション、スプレッドシート、Wiki、リストなど、多様な非構造化および半構造化データの宝庫です。CopilotがSharePointをAdvanced RAGのデータソースとして活用することで、以下のようなメリットと機能が実現されます。
●セマンティック検索による高精度なドキュメント発見
<課題>
SharePointの標準検索はキーワードベースになりがちで、ユーザーの意図を完全に捉えきれないことがあります。
<Advanced RAGによる解決>
Copilotは、ユーザーの質問の意味(セマンティクス)を深く理解し、SharePoint内のドキュメントコンテンツをベクトル埋め込みとして表現します。これにより、キーワードが一致しなくても意味的に関連性の高いドキュメント(例: 「売上不振の原因は?」という質問に対して「市場分析レポート」や「競合分析資料」など)を正確に特定できます。
<具体的な応用>
過去のプロジェクト報告書、部門ごとのナレッジベース、トレーニング資料など、企業独自の専門知識が詰まったドキュメントから、ユーザーが必要とする情報をピンポイントで引き出すことが可能になります。
●マルチモーダルコンテンツの理解と活用
<課題>
SharePointにアップロードされた画像、図、表、グラフなどの非テキスト情報は、これまでの検索では十分に活用できていませんでした。
<Advanced RAGによる解決>
Copilotは、高度な画像認識やOCR(光学文字認識)技術、表構造の理解能力をRAGプロセスに組み込みます。これにより、SharePoint上のPowerPointスライド内のグラフデータ、Excelシート内の特定の表、PDFドキュメント内の画像に含まれるテキストや図の意味までを理解し、回答生成に活用します。
<具体的な応用>
「昨年の四半期ごとの売上推移がわかるグラフを見せて」という指示に対し、関連するPowerPointプレゼンテーション内のグラフ画像を特定し、その情報を抽出して回答に含めることが可能になります。
●セキュリティとアクセス権限の遵守
<課題>
企業情報において、誰がどの情報にアクセスできるかを厳密に管理する必要があります。
<Advanced RAGによる解決>
Copilotは、Microsoft Graphを介してSharePointのアクセス権限と統合されています。ユーザーがアクセス権限を持たないドキュメントは、たとえ検索で関連性が高くても、RAGプロセスには利用されません。これにより、情報セキュリティとコンプライアンスが厳格に保たれます。
<具体的な応用>
特定のプロジェクトチームのみが閲覧できる機密ドキュメントの内容が、そのプロジェクトに属さないユーザーの質問に対する回答に誤って含まれることはありません。
2. Microsoft FabricをデータソースとしたAdvanced RAG
Microsoft Fabricは、データ統合、データエンジニアリング、データウェアハウジング、データサイエンス、リアルタイム分析、ビジネスインテリジェンス(BI)などの機能を統合した、エンドツーエンドの分析プラットフォームです。CopilotがFabricをAdvanced RAGのデータソースとして活用することで、データに基づく高度な洞察を活用した情報提供が可能になります。
●構造化データからの正確な事実抽出と分析
<課題>
顧客データ、売上データ、在庫データなどの構造化データは、従来のLLMでは直接アクセス・分析が困難でした。
<Advanced RAGによる解決>
Copilotは、Fabric内のLakehouse、Data Warehouse、Power BIデータセットなどのソースに対してクエリを実行する能力を備えています。ユーザーの質問の意図を、SQLやDAXなどのデータクエリ言語に変換し、Fabricから最新のデータを直接取得します。このデータはLLMに与えられ、分析や要約が行われます。
<具体的な応用>
「先月の地域別の製品Aの売上トップ5を教えて」「最新の在庫データから、特定の商品の在庫切れリスクを評価して」といった質問に対し、Fabricからリアルタイムの数値データを取得し、正確な事実に基づいた回答や洞察を生成します。
●複数データソースの統合と複合的な分析
<課題>
複数のシステムに分散しているデータを横断的に分析し、意味のある洞察を得ることは、複雑なプロセスでした。
<Advanced RAGによる解決>
Fabricは多様なデータソースからのデータ統合をサポートしているため、CopilotはFabricを介して、販売データ、顧客サポート記録、Webサイトのトラフィックデータなど、異なる種類のデータを組み合わせて分析することができます。これにより、より包括的な視点からの回答が可能になります。
<具体的な応用>
「特定のキャンペーンが売上に与えた影響を、Webサイトのアクセス数と顧客からのフィードバックも考慮して分析してほしい」といった複雑なビジネス上の問いに対し、複数のFabricデータセットを連携させて分析し、洞察を導き出すことができます。
●リアルタイムデータの活用と動的なレポート生成
<課題>
ビジネス環境の変化は速く、意思決定には常に最新のデータが求められます。
<Advanced RAGによる解決>
Fabricのリアルタイム分析能力と連携することで、Copilotは最新のストリーミングデータやほぼリアルタイムのデータに基づいて回答を生成できます。また、Power BIレポートのデータモデルにアクセスし、ユーザーの質問に応じて動的にグラフや表を生成することも可能です。
<具体的な応用>
「今日の午前中のECサイトのアクセス状況とコンバージョン率の推移をグラフで表示して」といったリクエストに対し、Fabricのストリーミングデータから情報を取得し、視覚的に分かりやすい形式で提供することができます。
■今後の展開
ヘッドウォータースが提供する「Copilot Advanced RAGサービス」は、Microsoft 365 Copilot、Copilot Studio、Azure AI Foundryと組み合わせることで、企業独自の生成AI活用における、あらゆるRAGプロジェクトやAIエージェントに適用可能であると考えています。
また、ヘッドウォータースが提供する「SyncLect AI Agent」において、Copilot Advanced RAGとの連携を強化し、より高速なソリューション提供を行ってまいります。
以上
■Advanced RAGとは
高度な検索拡張生成(Advanced RAG、略称:ARA)は、より洗練されたデータ処理によって検索品質を向上させる生成AI技術です。「検索読み取り」に課題のある従来のシンプルなRAG(ナイーブRAG)が抱える問題を解決するもので、複数回または反復的な検索を用いることが特徴です。
具体的には、検索前最適化(例:文ウィンドウ検索)、検索最適化(例:キーワード検索とベクトル検索のハイブリッド)、検索後最適化(例:検索結果の再ランク付け)、インタラクティブRAG(ユーザーがリアルタイムに検索プロセスへ介入可能にする手法)、取得データの統合強化(コンテキストや関連性に基づく重み付け統合)、反復的な改良による精度向上--といった技術要素を含み、従来より高度で柔軟な情報検索・生成を実現します。
■Microsoft Fabricとは
Microsoft Fabricは、データの移動・蓄積からデータサイエンス、データエンジニアリング、データ統合、リアルタイム分析、ビジネスインテリジェンスまで、あらゆる工程をカバーする、企業向けのオールインワン分析ソリューションSaaSです。複数ベンダーのサービスを寄せ集める必要がなく、分析ニーズを簡素化するとともに、生成AIを中心としたAI連携に優れたプラットフォームとなっています。
■RAG(Retrieval Augmented Generation)とは
RAG(レトリーバル・オーグメンテッド・ジェネレーション)とは、大規模言語モデル(LLM)と外部のデータベースや情報源を組み合わせ、外部知識の検索を踏まえて、より高度な文章生成を行う技術です。
ユーザーからの質問に対し、まず関連する外部知識を検索・取得し、その情報を元にLLMが回答生成することで、トレーニングデータに含まれない最新情報や社内機密情報にも対応可能になります。
■参考
・RAGを活用した複数AIエージェントによる自律業務遂行で 「Agentic Work Flow」の正答率99%を達成
https://www.headwaters.co.jp/news/achieved_99_accuracy_rate_agentic_workflow.html
・Microsoft AzureでAIエージェントを検討している企業向けに「Azure AI Foundry Agent Service」ハンズオン型AgentOpsラボサービス開始
https://www.headwaters.co.jp/news/azure_ai_foundry_agent_service_agentops_labo_service.html
・ヘッドウォータースと富士通、宣言型エージェントを活用した プレゼンテーション自動化機能「Fujitsu AI Auto Presentation」を共同開発
https://www.headwaters.co.jp/news/_fujitsu_ai_auto_presentation_joint_development.html
・JR西日本とヘッドウォータースコンサルティング、AI Agent Day 2025 Summerで「鉄道におけるAI活用と業務の未来」について共同発表
https://www.headwaters.co.jp/news/ai_agent_day_2025_summer_jrw_hwscosulting_speaker.html
・Microsoft Ignite Japanセッション「伊藤忠商事における生成AIの活用紹介とAzure AI Studio及びFabricに対する期待」の動画が公開されました
https://www.headwaters.co.jp/news/microsoft_ignite_itochy_movie.html
・生成AIの業務活用における「RAGがうまくいかない」企業向けにMicrosoft Fabricをデータプラットフォームとした 「Advanced RAG」サービス開始
https://www.headwaters.co.jp/news/gen_ai_microsoft_fabric_advanced_rag.html
・マイクロソフト ジャパン パートナー オブ ザ イヤー 2024において 「AI イノベーション パートナー オブ ザ イヤー アワード」を受賞
https://www.headwaters.co.jp/news/microsoft_Japan_partner_year_award_2024.html
■商標について
Microsoft、Azure、PowerPoint、SharePoint、Microsoft Entraは、米国Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標または商標です。
記載されているその他の会社名および製品名は、各社の商標または登録商標です。
■会社情報
会社名:株式会社ヘッドウォータース
所在地:〒163-1304 東京都新宿区西新宿6-5-1 新宿アイランドタワー4階
代表者:代表取締役 篠田 庸介
設 立:2005年11月
URL :https://www.headwaters.co.jp
■本件のお問い合わせ先
株式会社ヘッドウォータース
メール:info@ml.headwaters.co.jp